ロシア軍の第二世代機。

正式名称はキネティック・ロボティクス・ヴィークル。

大容量の電子装備を積載した、全高3m以上に達する大型エクソスケルトンである。その名の通り、自律多目的プラットフォーム群に随伴し、最前線にて戦術指揮を行う。

脚部にはジェットエンジンを装備し、装甲兵器でありながら3次元機動能力を有している。人間の足ならば登頂に数日を要する過酷な山岳地も、KRVであれば数分で容易に走破することが可能であり、地上戦における戦略の幅を格段に広げた。

全長10メートル以上の宇宙兵器であるアドバンスドKRVに対し、広く普及している3〜6m級の機種はベーシックKRVと呼ばれることもある。

最初期のアドバンスドKRV

KRVの起源は、2010年代に先進国にて運用されていた移動複合火力装置にまで遡ることが出来る。これは地形や環境を問わず大火力を運用するための兵器であり、通常車両が進入できない立体的な都市部や山岳地帯、密林などにおいて戦車に準ずる威力を発揮した。

歩兵と同等の走破性を有する移動複合火力装置は、やがて指揮車両として進化し、兵器開発史に名を刻むこととなる。

KRVはこの兵器の指揮統制システムとしての側面をより強化した兵器であり、あらゆる環境に適応し、様々な戦力に追随して遠隔操作する必要があったため、より高度な万能性を求められた。

そして、2060年代。米空軍は来るべき氷河期と宇宙殖民時代に備え、次世代KRVの運用を基幹とした人類史上初の宇宙艦隊の創設を決行する。この次世代型KRVは、従来の形態に近い艦艇の近接防衛システム型と、宇宙戦闘機然とした有人機動砲型の、2系統が平行して同時に開発された。後に、近接防衛システム型KRVはベーシック、有人機動砲型はアドバンスドとそれぞれ呼称されるようになる

国防総省から提示されたアドバンスドKRVの要求性能は、「宇宙兵器を統御するために太陽嵐状況下でも有効レンジを数十万キロメートルオーダーで維持できる強力な通信システムを備えること」「独力で月と地球を往還できる巡航能力を有すること」「搭乗者はドライバー一名のみ、あるいはドライバーとナビゲーターの二名のみ」などの非常に困難なものであった。それは長らく続いた紛争の時代に終わりが見え始めた当時の世情に対する議会のスタンスを端的に示していた。いずれ来たる国家間の大規模戦争において米国が主導権を握るため、アドバンスドKRVは新世代の軍事の要として目されていたのだ。

結局、アドバンスドKRVは求められた性能諸元を生産性を維持しつつ実現させるために、武装をほとんど省かれた形で開発される。生命維持に関する諸所の機能もお粗末なもので、搭乗者は専任サイボーグに限られた。各種無人兵器の効率的な運用手段として開発されたアドバンスドKRVだが、その配備に要する人件費は高騰し、軍縮のための軍拡という本末転倒な事態を招いた。

なにはともあれ一応の完成を見たアドバンスドKRV「PA-1メトロノーム」は、再建中の人工衛星群を防備すべく地球周回軌道へ配備された。日米安保の置き土産である海外自衛隊へもデチューンされたPA-1Jが供給され、実戦に投入されている。

アドバンスドKRV配下のオートマトンは、3ユニット計12機で運用されるのが一般的である。アドバンスドKRVとオートマトン編隊の距離はできるだけ離すことが理想とされるが、実際には通信妨害によりある程度接近する必要がある。中継プローブを射出する手段もあるが、そういった簡易的な機器では宇宙戦闘の展開速度に追随することは難しい。

黒体エンジンや、惑星探査機に搭載されていた自動復元用マイクロマシンを装備しており、理論上は無限の航続距離を有している。

以上がアドバンスドの成り立ちである。アドバンスドは米日露中の4国で生産配備され、2091年に月軌道へ投入されて数ヶ月以内に全て喪失している。

初期のアドバンスドが失われた後は、月軌道会戦の戦訓を元に自衛のための火力や防御システムを備えた長距離巡洋兵器として再設計された。

第三次世界大戦後は宇宙兵器拡散防止条約によって全てのアドバンスドKRVは封印されており、後継機も開発されていない。

オートマトン

オートマトン(AUTO Maneuverability Architecture Translated Order Network weapon system)とはKRVに指揮される無人兵器群の総称である。

オートマトンを軍隊の手足とするのなら、KRVは脊髄、アビエイターは頭脳に例えることができる。

サイズや形態は様々だが、従来の有人兵器をあらゆる面で上回る性能を有する。

運用システムの必要上、戦車や歩兵に代替する機種でも、KRVの展開速度に追随できる程度の機動力を与えられている場合が多い。

民生用KRV

KRVは民間でも運用されており、救助活動や建設作業、あるいはホビーに特化した機種が市場に出回っている。

救命活動などの特例を除き、KRVを一般道で使用することは禁じられており、ホビー機種はサーキットや山岳地などの閉鎖されたフィールドでのみ走行が許可されている。

腕部には電磁射出式のウインチを内蔵しており、機動の補助や足場の固定などに用いられる。

実は、腕部ウインチの制御OSは、違法なパッチを当てることによって容易に火器管制装置へアップデートすることができる。そのため一般民間人が自衛のために民生KRVをテクニカルに改造するという事例が後を絶たず、治安の悪化に拍車をかけているという問題もある。