人類史に寄り添う形で進歩を続けるKRV開発史は、RMAや社会のパラダイムシフトに伴い、幾度かの革新を経ていた。
その革新の前後を世代として区切ることで、二百年以上に渡るKRVの歴史は四段階の進歩を遂げていることが理解出来る。
下記の解説は、それら四段階に区分された各世代の特長を単純化しまとめたものである。
第1世代
主に2000年代から2110年代までのおよそ110年に渡って配備されていた世代。
ステルス技術と防空システムの円熟により開発を強く求められ、国際テロルの跋扈により配備を後押しされた兵器。
移動陣地、もしくは移動砲台として製造された前期型と、対戦車駆逐兵器としての性格を色濃くした後期型に分類される。
動力源は燃料電池。
最初期にはガスタービンやロケットモーターを推進器としていたが、各国に普及しだした2030年代からはリニアジェットが主流となる。
インテリジェンス素材を導入したことにより維持コストが抑えられ、結果として多くのテロリストやゲリラの手にまで渡ることとなったのは皮肉な巡り合わせではあった。
第2世代
主に2090年代から2190年代までのおよそ100年に渡って配備されていた世代。
また2210年代に至り、第3世代機の失敗によって、再生産が行われ始めている。
宇宙施設の防衛から軌道上砲撃による地表制圧まで、宇宙における様々な任務を担うべく開発された。
開発自体は2050年代から始まっていたが、上記の宇宙戦闘能力の実現に関する要求性能のハードルが高く、実用化までには半世紀近くの歳月を要した。
最も多く普及した世代であり、五十年以上ものあいだ同一機種を主力KRVとして運用している国家もある。
サービターという無人攻撃端末を運用するための、いわば前線司令部として設計されているが、正面兵器としても十二分に強力である。
前期第2世代機の推進器は、核融合ロケット・ジェットコンパーチブルエンジンであり、発電機も兼ねている。
後期第2世代機は、パサードラムジェットエンジンを採用したことにより、推進剤を搭載する必要がなくなった。
非常に長い間運用され続けており、第2世代機という括りの中でも開発時期によって性能差は大きくばらついている。
第3世代
主に2170年代から2190年代までのおよそ20年に渡って配備されていた世代。
開発や維持に要するコストが高騰し、あまり普及しなかった不遇の世代である。
月や火星などで力をつけ始めた宇宙国家に対するカウンターとして開発された。
主機は黒体エンジンであり、重力傾斜によって発電や推進を行う。また、莫大な出力と処理能力により、量子テレポート装置の標準装備を実現している。
惑星を制圧するために黒体兵器を含む大量破壊兵器を搭載しており、存在自体が戦略的価値を持つようになった。
砲弾からコンピュータに至るまで全てがインテリジェンス素材で構成されており、メンテナンスフリーでの運用が可能となっている。それゆえに公的な組織の支援がない個人でも前述の通りの高火力を容易に扱うことができるため、管理には細心の注意を払う必要があった。
情勢の変化により政治的にお荷物となり、各国では製造は中断され、主力KRVは第2世代機へと回帰していった。
あまりにも頑強であり、解体には同格の第3世代KRVの火力を必要とするため、ほとんどの機体は処分することもできず封印されている。
第4世代
主に2200年代から開発が続けられている世代。
オールKRVドクトリンに基づいて設計されており、全ての戦闘行動をKRVとその母艦でまかなうことにより、運用コストや組織系統をスリム化することを意図している。
第3世代機の失敗を受け、基礎設計の段階で厳重にセキュリティ対策が施されている。
これはどういうことかというと、アプリケーターを内蔵した専任アビエイターが任意に筐体を生成解体するという仕様にしたことで、敵対組織への流出を防ぐ仕組みを作ったのである。
専任アビエイターはポストヒューマノイドであり、KRV生成プラントであると同時に主機やセントラルコンピュータの役目も担っており、KRVは一種の強化拡張装備と見なすこともできる。
第3世代機がバンガードKRVの延長にあるものとすれば、第4世代機はウェアラブルKRVの完成形とみなすこともできる。
真空からエネルギーを直接抽出する相転移炉を主機としており、次元転換方程式に基づいた時間操作システムにより見かけ上は超光速で機動することができる。
性能的には第3世代機の縮小再生産という水準のものだが、それゆえに戦術的にも政治的にも扱いやすい実用的な兵器として仕上がっている。
生産数は2220年代に至ってもごくわずかであり、主力として運用されるまでには至っていない。